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■ 議会の中の性差別を考える 
議員セクシュアルハラスメントの事例から〜
鈴木めぐみの記事『We』2002年5月号より

●政治は男性社会
 「NGOの排除問題」に始まった一連の騒動で、小泉内閣の支持率は一気に低下した。特に「涙は女の最大の武器だから」という一言で、小泉総理が田中真紀子議員を「大臣」や「国会議員」としてではなく、「女」としてしか見ていなかったことや女性に対する差別的意識が露呈され、多くの女性たちを失望させた。
 遅れていた日本の女性の政治参画は数の上ではようやく進みつつあるものの、依然として政治の世界の内実は大変強固な男性社会だ。そうした男性社会に異分子である女性が入る時に様々な「摩擦」が起こる。性差別やセクシュアルハラスメントも摩擦のひとつだ。議会のなかの性差別は、議員同士だけに限らず、むしろ現実には政治活動をする上で関係せざるをえない行政職員・組織の影響が大きい。
 議会のなかで性差別が起きる背景には、女性議員の少なさが挙げられる。私は3年前、女性・市民派の代表として市議会議員に初めて当選した。その結果、議員48人中女性がようやく4人になった。女性という因子だけでなく、自治会、企業、党推薦の議員ばかりのなかで市民派という因子も加わり、議会の中で私は異分子そのものだった。
 初めて足を踏み入れた議会は、同僚議員や市職員から「女性なんだから、かわいければいいんだよ」「女性には議員は無理だよ」といった性差別的な言葉が日常的にかわされていて、私は何というところに来てしまったのだろうかと驚いた。ある時などは、一部長から急に指をさして「お前」と呼ばれ、わけのわからない文句を言われたこともあった。

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●職員からのセクハラ
 私の受けたセクシュアルハラスメント行為という具体的な事例を紹介し、その背景、周囲の反応などを通じて、今まであまり明らかになっていない議会の中の性差別を考えてみたい。
 昨年8月部長職である男性から、私はあからさまなセクシュアルハラスメント行為を受けた。市民団体の会合に参加するために、レストランの入口に入ったところ、そこに酒を飲んで顔を赤らめた市職員の集団がぞろぞろと出てきた。そのなかにいた部長が私の名前を呼んだかと思うと、大きく手を広げて抱きつき、頬にキスをしてきた(それも2回も)。他の職員は見ていたが、止めようともしない。何ごともなかったかのように、鏡で髪を直す男の姿を見て、虫酸が走った。私は急な出来事で自分の身に何が起こったのかをすぐに理解できず、その場を走り去ることで精一杯だった。
 セクシュアルハラスメントを受けた翌日、加害者本人に直接謝罪を求めに行ったが、反省や謝罪の言葉は一言も返ってこなかった。1週間後、市長に適切な対処を求める申入書を提出し、迅速かつ適切な対処と防止の徹底を申し入れた。この機会にセクシュアルハラスメントや性差別意識を社会的な問題として、問題提起したいと意気込んでいた。

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●2次被害
 しかし、思うようにことは運ばなかった。申入書提出の翌日、議員控え室で次回の議会質問のために職員とヒアリング中、約束もなく、加害者本人が一人で入ってきた。その場にいた職員2人の話を強引に中断させ、部屋から追い立て、さらに部屋のドアを閉めようとしたのだ。「こっちに来ないで下さい!」と私が拒否したにも関わらず、どんどん近付き「この間は本当に申し訳ありませんでした。コミュニケーションのつもりだった。(高校の)後輩でもあるし、」と、とりあえず謝罪したということにしておきたという高圧的な態度に、恐怖心でいっぱいになった。
 すぐに申入書を提出した先に「なんで本人に直接来させるのですか?」と聞くと、「いや、本人に確かめたら認めたので『謝ってきたら?』と言ったら『謝ります』と言ったからね、謝罪しにきたのだと思いますよ。その気持ちをぜひ、わかってほしいですよ」と被害を受けている人に対して、加害者の気持ちを考えろなんてとんでもないこと言われて、役所の人権意識の無さに空恐ろしさを感じた。
 事実関係をしっかり調査をしないうちに、加害者1人で謝罪に来ることを許すことは、「とにかく謝れば何とかなるさ」「個人の問題だ!」ということなのだろう。それ以後、自分でも乗り越えられないほどのセクシュアルハラスメントの被害を実感することになった。控え室に1人でいるとまた部長が来るのではないかと怖くなり、議会中にも関わらず、仕事が控え室でできなくなってしまった。また、セクハラ対策の鉄則である事実関係を記録しておかなくてはと思い、パソコンの前に座るのだが、繰り返し繰り返し、男の鏡で髪を直した姿や強引な態度が思い出されてきて、一向に進まない。私は女性の代表なのだから、しっかり問題追求しなくては、議員なのだから頑張らなくてはと気持ちを奮い立たせてみるが、できない。そのうち夜眠れない、1人でいると涙が出てくる、最後にはご飯がのどに通らなくなってしまった。たまたま電話した知人から、「自分の気が進まなければ、いくら議員でも頑張らなくっていいのよ」と言われて、ようやくすっと楽になった。
 これまでも性的暴力やいじめなどで「2次被害」という言葉は知っていたが、今回身にしみて「2次被害」を理解することができた。直接的な行為そのものも問題だが、その後の対応のまずさが被害者の精神的被害をさらに大きくさせることを忘れてはならない。


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●周りの反応を分析
 その後、市は事実関係などをきちんと調査しないまま、謝罪をし、加害者に減給と降格(部長から参与)という処分と研修などを通じて、セクハラの未然防止に力を入れると記者発表した。そして、このセクハラ事件が多くの人たちの知るところとなった。実名報道、年齢報道、被害者が特定されてしまったため、様々な反応がダイレクトに私のところに集まってきた。ちなみに被害の訴えよりも、加害者のいいわけや謝罪のほうに行数が割かれていた報道だったことも付け加えておく。

1.「あなたがかわいいからよ」という反応
 セクハラ受けるぐらい君は魅力的なんだから、よかったねと言ったニュアンスが感じられるものだ。「(だから)そう怒らなくてもいいじゃない」と付け加える人も。
 女性がいくら「セクハラ被害」を受けたと言っても、一部の人から見ると、名誉なこと、男に関心をもたれ、女としての魅力があったということにされがちだ。女性を人格と尊厳をもった人間として見るのではなく、男を喜ばせ楽しませ、奉仕する単なる女として扱われてしまう。いくら議員といっても、所詮女だという意識だ。これには女性の人権という視点がすっぽり抜けているが、まだまだそういうふうに思われているのが現実だ。

2.「君にも落ち度があったのではないのか」という反応
 「服装に問題があったのではないのか」「名前を売るためのパフォーマンスじゃないのか」「相手が親愛の表現と言っているのだから、仲よかったんじゃないの?」「被害者意識が強すぎるのではないか」等の表現の反応は、セクハラ被害の申し立てをすると必ず出る一般的な反応だ。こういう反応されるとわかっているから、女性は抵抗しにくく、黙って辞めていったり、泣き寝入りをさせられる事態になっていく。さらにそのことが、加害者側にとっては、これはオーケー!だと思わせてしまうことになり、自分たちの行為を肯定してしまうことになる。

3.「コミュニケーションだったと言っているじゃないか」という反応
 セクシュアルハラスメントで告発されると男性は「いやそれはコミュニケーションだった」とか、「あいさつだった」とかいうケースが多い。コミュニケーションとは相手と自分とが対等で、相手を思いやり、相互に交流し合うのがコミュニケーションだ。相手の気持ちを考えようとせず、自分の思いのままにするセクシュアルハラスメントとは全く反対のものだ。しかしそうした言い訳は職場の中で長いこと許されてきたのだ。男というのはこういうもの、女というのはこういうものと日々目に見えない形ですりこまれているので、ものの考え方そのものを変えていかなくては、こうした反応はなくならないであろう。

4.「仕事ができにくくなるよ」という反応から
 直接被害者である私に「(これから)仕事ができにくくなるよ」 「いつまでも言っていると、仕事に支障をきたすよ」といった、一見優しくアドバイスをするようなニュアンスだが、よく聞いてみると、脅しと推測される発言があった。
 自分たちの領域と男らしさを脅かす女性に対する攻撃のひとつだ。相手が議員であろうとも、女性なら自分より低い地位においておきたい。また、女性を1人前だとは思っていない、ましては競争相手としては見ないという表れからだ。
 職場で「仕事ができにくい」状態にされると、働けなくなったり、自分の方が悪かったように言われて辞めなければならないということが起きるだろう。

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●使用者の責任
 女性に対する重大な人権侵害であるセクシュアルハラスメントは、個人の責任だけでなく、雇用管理の問題として使用者の責任も重大である。改正男女雇用機会均等法の第21条では、「事業主は、雇用管理上の配慮をしなくてはならない」と職場におけるセクシュアルハラスメントについて、事業主に配慮義務があると位置づけている。
 我が市は99年4月に「セクシュアルハラスメントの防止及び苦情相談に関する要綱」を策定していたが、今回の事例が初めて具体的に対応をするものだった。これまでに指針の作成、相談員の任命、研修などはしていたが、2次被害が起こったことからも、市のセクシュアルハラスメントへの対応は十分でなかったといえよう。さらに、被害者の人権への配慮、2次被害への認識、相談員の役割、調査委員会のあり方、使用者責任の取り方、加害者の処分の決め方など市役所の対応が適切であったかどうか、大いに疑問が残るところだ。相談窓口をつくっても、今までに相談ゼロという実績からも、相談窓口も充分に機能していなかったことが伺われる。
 また、要綱は対象を職員に限っていて、今回の事例のように加害者が市職員、被害者が議員の場合は、同要綱の適用されない範囲となってしまう。対市民、対取引業者、対非常勤職員・アルバイトの場合も摘要されない。市役所は公共サービスを提供したり、許認可を与えたり、仕事を発注したりとその力は大きい。例えば、母子家庭の女性に児童扶養手当がなければ、生活できないという弱味に付け込んでのセクハラは、権力の乱用だ。こうした役所の持つ公権力についても、ジェンダーの視点からの法的規制が必要だと思う。
 男女共同参画を推進していく市は、民間に先んじて積極的にセクシュアルハラスメント防止に努める立場にある。今回の事件の検証をきっちりし、問題点を明らかにしたうえで、性差別意識を崩すような役所内の研修内容の再検討、対応システムの見直しなどすべきだと提案した。今後、役所内の本当に意味での男女平等を高めていくことで、市全体の男女共同参画に基盤づくりにつながることになるはずだ。
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●議会のなかの性差別が顕在化しない理由
 議会のなかでの性差別で被害を受けるのは女性議員だ。しかし、今まで議会のなかの性差別が語れることは少ない。なぜなのだろうか。
 女性議員は、周りから女性の代表として「主張し、闘う強い女性」というイメージで見られる。また自分自身も、市民から選ばれたんだという自負があるため、泣き言を言わず、強い女でなくてはならないと思い込んでいる。つまり、周りからも自分自身も、セクシュアルハラスメントを受けたら、女性議員ならきっぱり主張し、闘わなくてはならないものとイメージされている。しかし、現実のセクシュアルハラスメントは陰湿で、他の人には説明しにくく、そのために主張しにくい。
 女性議員自らが「セクハラされた」とか「セクハラを受けて苦しい」など被害を告白することは、「私は女として扱われた」と同様の意味となり、闘う強い女のイメージに反することになってしまう。次回の選挙への影響を考えると、無理して告白することより、自分で飲み込んで表面上の強い女を演じている方がいいということになる。さらに、議員自身も選ばれたのだから「うまくやっていきたい」、「何かあっても乗り越えなければならない」という気負いがあり、周りの人たちも議員なのだから、こうしたトラブルをうまく乗り越えて欲しいと思っている。「能力さえあれば、女性だって差別されることはないのよ」という姿が求められているため、告発できないのだ。
 また、議員は選挙で選ばれるため、セクハラの告発がどう選挙に影響するのかが掴みきれないために告発できないということもあろう。
 そして加害者側は、女性議員が「NO!」を言えないことを認識しているため、やってもそのことで文句を言われない、反撃されない、告発されないというのがあって、安心して実行できるという結果にもなっている。

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●女性議員を増やすことが解決
 議会は、市民の暮らしや将来を審議し、議論をする場である。しかし、議会のなかの性差別があるために、女性議員が充分活動できない、活動を制限されてしまうというのは、おかしいことではないだろうか。議会のなかの性差別がなくなるためには、より多くの女性が議員になることが当たり前だが、一番の解決策だ。

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追記
 今回の事件のあと、市民の中からこのままではいけないと「セクハラを許さない市民の会」が結成され、勉強会を開催し、セクシュアルハラスメントに対する社会全体の意識改革を目指して活動を始めた。また、超党派の女性議員が共同して議長あてにセクハラの防止徹底を市に申し入れるようにという要望書を提出したり、県の女性議員ネットワークが市と議長あてに申入書を提出するなど、大きな動きとなっていったことを追記しておく。

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