HAPPY PLAN!
  ☆とも生きプロジェクト☆

● 議員とNPOが協働する意味  (くらしと教育をつなぐ”We”http://www.femix.co.jp
          2004年6月号Bから抜粋/1年間「みんなで楽しく政治をしよう」を連載中)

「つぶやきを提案に変えていこう!」 〜とも生きプロジェクト〜

■つぶやきで終わらせないぞ

 車椅子を利用している友人が、念願叶い、親元を離れ、バリアフリー仕様の公営住宅で一人暮らしを始めた。ある日、彼女が「自由に外に出かけたいけれど、思うようにいかないの」とぽつりと言った。銀行への用事、買い物、映画鑑賞など誰もが当たり前にできることが、障害を持っているがために、サポートが十分ないと彼女の望みは叶えることはできないのだ。彼女の知り合いの障害を持つ人たちも同じような悩みを抱えていて、これまで個々に市の窓口で悩みをぶつけたり、サポートの充実を要望してきたが、変わらないと言う。

 「行きたい時に、行きたいところに」という思いはわかるし、声に出すことも勇気が要ったことだろう。けれども、バラバラに伝えたのではなかなか伝わっていかない。ここ最近、市は市民一人ひとりの声に耳を向けるという姿勢に進んできてはいるが、まだまだシステムとして十分確立されていない。課題解決のためには何らかの事業を行う必要があり、この事業のために税金を使うからには、市の財政課や議会を納得させる「根拠」が必要だ。
 
 そこで私は、彼女もメンバーのひとりであるNPO法人アクション・シニア・タンク(以下AST)に「一緒に根拠集めしない?」と声をかけた。ASTは、障害を持つ人々、高齢者、女性たちが当事者の視点から調査・研究・行動する、コミュニティシンクタンクを目指して活動しているNPOだ。そこで、会員の中で障害を持つ当事者を中心にメンバーを募り、「とも生きプロジェクト」(ともに支え、ともに生きる浜松プロジェクトの略)を立ち上げた。

■議員とNPOが協働する3つの意味

 私は「とも生きプロジェクト」に、議員の調査研究活動のために支給されている政務調査費を活用し、障害を持っている人たちの現状と課題、そしてその解決策についての調査研究を委託した。昨年度の委託料は約30万円。

 ちなみに浜松市議会の政務調査費は、議員1人当たり月に18万円、年間216万円だ。

 関連法令を探し出したり、調査データを分析したり、他都市の先進事例を見つけるなどの「根拠集め」をし、課題を解決するための「提案づくり」の作業は、議員一人でも可能だ。しかし、あえてNPOに、当事者に委託し、協働で「根拠集め」「提案づくり」をするのには三つの意味があるのだ。

 1つめは、政策は議員や役人のものではなく、あくまでも当事者のものだからだ。これまで当事者ではない者が「これはいいに違いない」と考えた施策を実施してきたが、実はしっくりとしない事例を数多くみてきた。やはり、実情やニーズがわかる当事者自らが提案づくりに関わらなくては、押し付けになってしまい、かゆいところに手が届く政策はできない。

 2つめは、プロジェクトメンバーが、今回の経験を通じて、「根拠集め」のノウハウを身につけることができることだ。思いがあっても相手に伝わる方法で伝えなくては、伝わらない。「根拠集め」のノウハウを共有したことで、次に別の課題にぶつかった時に、今度は彼ら自身がノウハウを活用し、解決を目指して欲しいと願っている。

 3つめは、調査研究の成果が、行政への提案にとどまるだけではなく、そこからNPOの事業の種、飯の種も見つけてしまおうということだ。障害を持つ人たちが抱えている課題は、行政だけでは解決できない。NPOが担ったり、NPOが企業と組んだりして、様々な組織、事業を組み合わせていくことで、解決がはかれるものだ。


 プロジェクトは、当事者へのアンケート調査やヒアリングを実施し、関連情報を集め、それを元にプロジェクトメンバーで議論をし、提案に結び付けていくという手法をとった。先日「誰でも、いつでも、どこでも、輝くために! 調査研究報告書」が完成した。一人のつぶやきから、提案という形になった。今後、NPOも私もこれをどう活かしていくかだ。

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